最近テレビを見ていると、イチゴの農業用ハウスの様子が映し出されることがあります。
現在の主流なのでしょうか、イチゴの苗は高設棚に植えられていて、水耕栽培されています。

イチゴが高い位置に生(な)るので、収穫するときにしゃがむ必要がなくて楽そうです。
また農業用ハウスの底面が全面コンクリートになっているので、高設棚が安定しています。
ただ農地が耕作できない状態になるので、以前は農地転用の許可を得る必要がありました。
ところが 2018年11月16日に法律が変わって、農業用ハウスの底面すべてをコンクリート張りにする場合、市町村の農業委員会に届け出をするだけでよくなりました。
以前は農地転用の許可が必要

農地法2条1項では、農地とは「耕作の目的に供される土地」と定義されています。
以前は、耕作できる土地こそ農地である、と行政庁では理解されていました。
たとえ農業用ハウスの中で水耕栽培によって農作物を育てていたとしても、底面がコンクリート張りになっていたら、そこは農地であるとは見なされません。

つまり農地であった場所を農地以外の場所に転用することになるので、農地転用の許可を得る必要があったのです。
実際の農業の形態に合わせて

ところが近年は栽培方法の多様化により、農業用ハウスの底面をすべてコンクリート張りにして、農作物を水耕栽培で育てる人も増えてきました。
たとえ底面すべてをコンクリート張りしていたとしても、そこで農作物を育てているのであれば農地と何ら変わりがない、と行政でも考えられるようになってきたのです。

ということで実際の農業の形態に合わせて、農地の取り扱いを見直すことになりました。
ある一定の条件を備えていれば、コンクリート張りでも農地と見なされます。
農作物栽培高度化施設の要件
次の条件をすべて備える施設は「農作物栽培高度化施設」として、農地と見なされます。
ただし農地法43条1項により、あらかじめ農業委員会へ届け出る必要があります。

- 農作物の栽培にしか使用されないこと。
- 周辺の農地などに悪い影響を及ぼすおそれがないこと。
- 日当たり問題(農林水産大臣の定める基準に適合)。
- 排水処理の問題。
- 施設を設置するのに必要な行政庁の許可を受けているか、受ける予定であること。
- 施設が「農作物栽培高度化施設」であることを、標識などで表示すること。
- 他人が所有する土地に施設を建てる場合は、土地の所有者の同意を得ていること。
「農産物栽培高度化施設」は農地と見なされるので、農地法30条に従って、定期的にまたは必要に応じて、その利用状況が調査されます。
くわしくは、農地がある市町村の農業委員会にお尋ねください。
農地の違反転用
「農作物栽培高度化施設」では、届け出た通りに農作物を栽培しなければなりません。
農業用ハウスの底面すべてをコンクリート張りにしておいて、農作物の栽培が行われなかった場合は、もちろん農地の違反転用に当たります。
また「農作物栽培高度化施設」の全部はもちろん一部でも、農地以外に使ってはいけません。
- たとえば施設を撤去して、住宅や工場などを建てること。
- たとえば施設内に直売所やフードコート(食事処)などを設けること。
直売所やフードコートは安易に作ってしまいそうなので、気を付けなければなりません。
あとがき
農地転用の許可申請手続きに比べれば、「農作物栽培高度化施設」の届け出手続きは、かなり簡素化されているようです。

農地転用する訳ではないので、届出書と添付書類さえしっかりしていれば、簡単に受理されそうです。
これから日本の農業も、多様化されるといいですね。
もし耕作放棄地が減れば、農地法を改正した甲斐があるというものです。
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