法定相続情報証明制度という比較的新しくできた制度があります。
相続人の相続手続きは大変なので、その負担を軽くするためのものだと言います。

通常、相続関係が正当なものであることを証明するためには、被相続人の生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍謄本などの束が必要になります。
これを見やすい形にまとめて、さまざまな相続手続きで使いましょう、という制度です。
戸籍謄本の束はいろいろと面倒!

たとえば銀行で、被相続人(亡くなった方)名義の預金口座の名義を変更しようとする場合、次のような書類が最低限必要になります。
- 遺産分割協議書(相続人の間で、どのように遺産を分割するか、協議した結果をまとめた文書)
- 戸籍謄本の束(被相続人の生まれてから亡くなるまでの、連続した戸籍謄本や除籍謄本など)

これらの書類のうち戸籍謄本の束は、持ち運ぶのも、そこから相続関係を読み取るのも、とても面倒です。
むかしの古い形式の戸籍謄本(改製原戸籍)は手書きなので、さらに読みにくくなります。
法定相続情報一覧図とは
というわけで、法定相続情報証明制度という制度が作られました。
まずは、戸籍謄本の束から相続に関係する部分だけを抜き出し、それを見やすい形にまとめ、法定相続情報一覧図という書面を作成します。

つぎに、作成した法定相続情報一覧図を登記所に登録すると、法務局の公的なお墨付きがある法定相続情報一覧図の写しを交付してもらえるようになりました。
法定相続情報一覧図の写しは、登記所で何枚でも無料交付してもらえるので、相続手続きを同時並行で進められます。
法定相続情報一覧図を作るのは誰ですか?
では、法定相続情報一覧図を作るのは、一体誰なのでしょうか?

はじめて、この法定相続情報証明制度のことを聞いたとき、ボクはてっきり登記所の方が、法定相続情報一覧図を作ってくれるものだと思いました。
なぜならこの制度は、相続人の相続手続きの負担を軽くする制度だと聞いたからです。
しかし実際は、そこまで相続人の負担は軽くなりません。

相続人が役所・役場に行って戸籍謄本の束を集め、それらをまとめて、法定相続情報一覧図を作る必要があります。
法務局がひな形を用意
ということで法務局のホームページでは、法定相続情報一覧図の様式(ひな形)と記載例(記入の仕方)を Excel(エクセル)形式で無料配布しています。

さまざまな場合を想定して、さまざまな様式と記載例がありますので、自分の場合に合ったものをダウンロードし、法定相続情報一覧図を作成してください。
国税庁の確定申告書等作成ページでは、必要な情報を入力すると、自動的に確定申告書等が作成されますが、法務局では現在のところ、残念ながらそのようになっていません。

なお、行政書士などの一定の士業は、依頼を受けて代わりに法定相続情報一覧図を作成できます。
もう一つの理由は相続登記を促進するため

さて、法定相続情報証明制度が作られたもう一つの理由は、相続登記を促進するためだそうです。
相続が発生したとしても、不動産の所有権移転登記(名義変更)をしない人が多く、登記簿上の所有者と実際の所有者が違うことが多くなっています。

国や地方自治体が土地を収用して、道路や公共施設などを作ろうとしたときに、登記簿を調べてもその土地の本当の所有者が判らず、困ることが増えてきたようです。
というわけで、国は相続登記を促進して、土地の収用を円滑に勧めたいようです。
あっもちろん、民間の不動産取り引きも、円滑に勧めたいと思っているのでしょうね。
あとがき
ここで質問です。
あなたは、法定相続情報一覧図の写しがあったら、相続登記をしたいと思いますか?
ボクは、法定相続情報証明制度ができる前に、すでに相続登記を済ませていますので、よく判りません。

相続登記が滞っていた理由って、そもそも所有権移転登記の手続きが、自分でするのは面倒だし、かと言って司法書士の方に頼むのはお金が掛かるし、ではないかと思っていました。
法定相続情報証明制度で、相続登記が促進されることを願っています。
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