その覆面作家の本と出会ったのは、まだボクが千葉県の浦安市(うらやすし)に住んでいたときのことです。
当時よくアトレ新浦安の 2階にある書店に行って、コンピューター関連の書籍を購入したりしていました。
短編小説も好きなのでよく文庫本を買っていたのですが、たまたま知らない出版社のコーナーを通ったときに見付けたのが、鯨統一郎(くじら とういちろう)さんの本です。
鯨統一郎とは

鯨統一郎さんは覆面作家なので、その素顔や本名を明らかにしていません。
1998年の「邪馬台国はどこですか?」でデビューされて以降、次々と作品を発表されているので、その作品数は数え上げたらキリがないほどです。
また彼の作品にはシリーズになっていて、話が続いているものもあります。
すでに終わったシリーズもありますが、それらをきちんと書き分けているので感心します。
別シリーズの登場人物同士が、物語の中で共演することがあります。
そんなときは読んでいて、ひとりほくそ笑んでしまいます。
邪馬台国はどこですか?

鯨統一郎さんの本の中で最初に出会ったのは、創元推理文庫から出版されている「邪馬台国はどこですか?」です。
登場人物はいつも同じなのですが、歴史上あまり正確に判っていない事柄について、さまざまな観点から論じ合う形式の短編 6つが集まって、1冊になっています。

最終的には突拍子もない結論に落ち着く、という物語の構成になっているのですが、話の進め方が巧みなので、最後はなぜか納得させられてしまいます。
謎を解き明かす話が多い
鯨統一郎さんは謎を解き明かすのが好きなようです。

彼の作品の多くは、誰も解き明かせなかった歴史や伝説、童話などの謎を、解き明かす仕立てになっています。
本当の専門家からすると、もしかしたらデタラメな話に見えるのかも知れません。
しかしボクのような歴史などの素人から見ると、たいへん面白い読み物になっています。
無責任にさまざまな仮説を立てるのは、ときに楽しいものです。
個性的な女性が登場
鯨統一郎さんの本の中には、個性的な女性がよく登場します。
主人公になることも多いので、読んでいるとその女性の立ち居振る舞いが気になります。
すでに終わってしまったシリーズなのですが、「サイコセラピスト探偵 波田煌子(なみだ きらこ)」シリーズに登場する、主人公の波田煌子は特に個性が際立っていました。

メンタルクリニックを開業する彼女は、見た目が幼く専門知識も乏しいため普段、新米くんからも頼りなく思われがちです。
ところが最終的には鋭い推理力を働かせて、患者の悩みをすっかり解決してしまいます。
いつもそのギャップを心地よく感じながら、物語を読んでいました。
あとがき
はじめて鯨統一郎さんの本に出会ったころ、本屋では「邪馬台国はどこですか?」しか見掛けなかったのですが、次第に店頭に並ぶ本が増えていきました。

最初の頃は見かけるたびに買って帰って、楽しく読んでいました。
ところが最近は読書をサボっていたので、積読(つんどく)ばかりになっています。
鯨統一郎さんの執筆ペースはとても速いので、読みたい本が増える一方です。
折を見て、ふたたび読み始めなければなりません。
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