世の中には、亡くなったご先祖様が所有者のままになった農地がたくさんあります。
農地の相続が発生しても、相続登記(所有権移転登記)の手続きがされていないのです。
そのような農地を他人(ひと)に貸す場合、相続人の共有持ち分で過半数の同意が必要です。

ところが法律が改正されて、農地中間管理機構(農地バンク)になら、相続人の共有持ち分で過半数の同意を得ることなく、貸せるようになりました。
農地の相続登記をしないと

農地の登記簿上の所有者が亡くなったとき、本来なら相続登記の手続きをして、登記簿上の所有者を変更しなければなりません。
相続登記をしないと、その農地は相続人全員の共有になってしまいます。
相続登記をしないままで、さらに相続人が亡くなると、相続人の数が増えていきます。

このような農地を「相続未登記農地」といいます。
全国にある農地の約20パーセントに当たり、問題になっています。
相続未登記農地を他人に貸す

「相続未登記農地」を管理して固定資産税を納め、農業を営んでいた人が引退するとき、その人に跡継ぎがいれば話は簡単です。
ところが他人(ひと)に貸す場合、次のような手順を踏まなければなりません。
- 役所・役場から、被相続人に関係する戸籍謄本などを集める。
- 相続関係説明図(家系図のようなもの)を作って、すべての相続人を特定する。
- 相続人個々の所在を探して連絡をとる。
- 相続人の共有持ち分で過半数の同意を得る。

ただし、もし相続人のうち共有持ち分で過半数の所在が判らない場合、「相続未登記農地」は他人に貸せなくなってしまいます。
このような農地を「共有者不明農用地」といいます。
農地中間管理機構になら貸せる
ということで「共有者不明農用地」を解消するため、法律が改正されました。
「共有者不明農用地」を農地中間管理機構に貸し付ける場合だけ、簡易的な手続きを経ることで、相続人の共有持分で過半数の同意を得たとみなせるようになりました。

農地を管理していた相続人(共有者)の 1人は、市町村に「共有者不明農用地」を農地中間管理機構に貸し付けたい旨を申し出るだけです。
あとは農業委員会による簡易的な手続きを経たあと「共有者不明農用地」が農地中間管理機構に貸し付けられます。
簡易的な手続きには、簡易書留による照会や公示(6ヶ月)が含まれます。
賃貸料の分割

共有者の 1人が受け取っている賃貸料は本来、共有者全員に支払われたものです。
他の共有者は自分の共有持ち分に応じて、賃貸料を請求できます。
あとがき

この法律の改正は、農地を無駄に遊ばせておかないための特例です。
農地中間管理機構に農地を貸し付けられたからといって、その共有状態が抜本的に解消した訳ではなく、問題が先送りされただけです。
いつかは共有状態にある農地の相続登記をする必要があります。
そのままにしておくと、さらに相続人の数が増えてしまいます。
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