先日テレビを見ていたら、日光東照宮の建物に施されている彫刻について、専門家が解説していました。
彫刻はただ飾りで彫られている訳ではなく、それぞれに意味が込められているそうです。

ただ陽明門に、竜の彫刻とともに飾られた、空想上の生物の彫刻については、謎のままなのだとか。
残された文献に「息」とあるものの、「いき」なのか「ソク」なのか、読み方さえ判らないようです。
ということで、空想上の生物を調べてみました。
見つけた「贔屓(ひき)」という竜の子どもは、姿かたちが亀に似ており、顔つきも「息」に似ています。
空想上の生物「息」について
空想上の生物「息」については、日光東照宮に残された文献「宝暦結構書」にしか記されていないそうです。
ただ彫刻には意味があるはずなので、もし日光東照宮の創作だとすると、文献に何らかの説明があるはずです。
説明がないということは、竜や麒麟、鳳凰などのように、中国の伝説上の生物に由来するのでしょう。
中国の伝説上の生物を表す漢字は、どれも画数が多いので、むかしの人が写し間違えたのかも知れません。

ということで、中国の伝説上の生物を調べてみることに。
竜の彫刻の真下に「息」の彫刻があるので、親(ちか)しい関係のような気がします。
贔屓という竜の子ども
さて中国の伝説上の生物を調べてみると、竜が生んだ 9頭の神獣(竜生九子)の中に「贔屓」がいました。
姿かたちは亀によく似ており、重いものを背負うのが好きなのだそうです。

中国では太古の昔から「贔屓」が、石柱や石碑の台座の装飾「亀趺(きふ)」として使われてきました。
陽明門の「息」も重いものを背負うのが好きなようで、竜を背負っています。
もし「息」が「贔屓」だとすれば、生みの親を背中におんぶしていることになります。
親を大事にしなさい、という意味が込められているのかも知れません。
貝-14【贔】21画 ヒ(漢)・ビ(呉)・ヒイ(慣)/意味(1)|動|いかる。鼻息あらくおこる。
学研 漢字源 改訂第五版
「贔」の簡略形は「息」に似ている?
漢字には、画数の多いものがたくさんあります。
むかしは手書きだったので、何度も書くような場合、簡略化して書くことが多かったようです。
たとえば「森」「品」のように、同じ部品が 3つ配置されたものは、下の 2つを4つの点で置き換えました。
その影響で現在、「攝」は「摂」が、「澁」は「渋」が、正式な漢字として採用されています。
贔屓も古くは「贔屭」だったので、「貝」を 6つも書くのは大変だったはずです。
むかしの人は大いに省略して、「贔」の簡略形一文字で「贔屓」を表していたのかも知れません。

毛筆で書かれた「贔」の簡略形と「息」は、結構似ているような気がします。
あとがき
日光東照宮にはこれまで、何度も訪れました。
はじめて訪れたのは、中学校の修学旅行のときです。
その当時から、厩舎の三猿(見ザル言わザル聞かザル)と回廊の眠り猫と裏側の雀は有名でした。
祖母のおみやげには、三猿の置物を買って帰ったぐらいです。

ただ最新の研究によると、これまで意味がないとされてきた彫刻にも、込められた意味があったそうです。
テレビで紹介されたのはほんの少しだったので、すべてが詳らかにされる日を心待ちにしています。
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