むかしは印鑑といえば、丸い縁の中に名前だけが入っているものでした。

しかし最近は、印鑑とスタンプが混ざり合ってきて、名前の横にイラストが入った印鑑も存在するようになってきました。
イラスト入りの印鑑は、印鑑の歴史の中では、まだ新しく出始めたばかりです。
ちゃんと明文化されたルールが、定まっていないことも、まだまだ多いようです。
遺言書の押印
遺言書に、イラスト入りの印鑑が押されていた場合はどうでしょうか?
民法における「印」
(自筆証書遺言)
民法968条
1. 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
民法は、自筆証書遺言に限らず、どの方式の遺言書に押す印についても、明確な規定を設けていません。

なぜなら、民法が定められた当時、印といえば丸い枠の中に、名前だけが彫ってあるのが当たり前で、イラスト入りの印鑑などは存在しなかったからです。
実際上の運用
ということで、遺言書の印鑑はなんでもいいように思えますが、そうとはなりません。

一応、遺言者本人が普段から、認め印などとして使用している印鑑であり、そのことを周りの人々が知っていることが必要です。
そのような印鑑なら、たとえイラスト入りであったとしても、遺言書に押す印として有効になるようです。
無難が一番

ただし、いくら有効な印鑑だといっても、相続人の中には、イラスト入りの印鑑に難癖をつける人がいるかも知れません。
ということで、相続人の間の無用な紛争を避けるためにも、遺言書の作成では、ごく普通の印鑑を押すことをおすすめします。
イラスト入りの印鑑を使うのは、将来法律で、イラスト入りの印鑑が有効であると、明確に規定されるまで、しばらくお待ちください。
印鑑登録証明制度

個人の印鑑を登録して、それが個人本人の印鑑であることを証明する事務は、市町村の自治事務です。
市町村の自治事務の運用は、市町村の定めた条例に従います。
なお自治事務の運用は、どこの市町村でもおおよそ同じですが、市町村により条例が微妙に違うこともあります。
登録できない印鑑

印鑑登録制度で、登録できない印鑑には、次のようなものがあります。
- すでに他人によって登録されているもの
- 戸籍上の氏名の全部または氏または名に一致しないもの(旧姓ではできない)
- 戸籍上の氏名以外の事項が入っている(職業、肩書きなど)
- 印影がはっきりしていないもの
- 印影が小さすぎるもの、または大きすぎるもの
- 印の材料が曲がりやすいもの、または壊れやすいもの
- 外枠がまったく無いもの、または4分の1以上が壊れているもの
- 文字が白く浮き出るもの
イラスト入りの印鑑は?
イラスト入りの印鑑って、名前と既成のイラストを選んで、機械で自動的に彫るはずです。

よくある名前の人が人気のイラストを選んだ場合には、まったく同じ印鑑が大量にできる可能性があります。
また普通は、イラストが氏名以外の事項と見なされ、登録を拒否されるはずです。
イラスト入りの印鑑で印鑑登録できた人がいるようですが、それは運が悪かったからです。
将来、まったく同じ印鑑で、不利益を被らなければよろしいのですが……。
金融機関の口座の開設

金融機関によって、イラスト入りの印鑑で口座を開設できるところと、できないところがあるそうです。
大手メガバンクが、イラスト入りの印鑑で口座を開設できると聞きましたが、やっぱり機械で彫った印鑑なら、同じものができる可能性があります。

世の中、いくら確率が低くても、どこかでやっぱり偶然というものが発生します。
どこかでだれかが、宝くじの一等賞に当選していることがその証拠です。
よく「想定していませんでした」という言葉をニュースで聞きますが、ちゃんと想定していた方がいいですよ。
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あとがき
よく見かけるイラスト入り印鑑って、安価なのでたぶん機械彫りですよね。
もし、イラスト入り印鑑が手彫りなら、まったく同じ印鑑などできっこないのですが……。

イラスト入りの印鑑で、遺言書を作成したり、印鑑登録をしたり、金融口座を開設したりして、果たして安全なのでしょうか?
もしボクが、機械彫りのイラスト入りの印鑑を作ったとしても、安全性を考慮して、認め印にしか使いません。
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